ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「ノンカフェインでよかったかな」
「はい、ありがとうございます」

ペットボトルのお茶を受け取り、頭を下げた。
大河原さんは私の隣に座ると、自分の缶コーヒーをプシュッと開け。

そのままのんびりと、飲み始める。

「あの、お仕事は……いいんですか?」

五反田には、確かオオタフーズの研究所があったはずだから……
きっとそこから、会社へ戻る途中だったのでは? と確認すると、悪戯っぽい笑みが返ってきた。

「まぁたまにはいいだろう。オニガワラがいない方が、若い連中は喜ぶ」

「はぁ」

あんまり美味しそうにコーヒーを飲むから、なんとなく腰を上げづらくなって。
私もペットボトルに口をつけた。

「おいしい……」

気が付くと、しみじみつぶやいていた。
こんな風に何かをじっくり味わったのって、久しぶりかも。

喉の渇きを覚えて、こくこく一気に半分以上飲み干して。
そう言えば、と思い出した。

樋口さんが言ってたっけ。
大河原さんが、私とライアンのこと、心配してるって。
何か、言っておいた方がいいかな。
でもなんて説明すれば……

頭をひねって考えながら、ごくっとまた一口、口に含んだ――


「お腹の子の父親は、リー専務だね?」

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