ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「わたくしは会場内にはおりませんが、何かお客様に聞かれたり、困ったことがあったらすぐに他のスタッフを呼んでください。真杉さんのことは、ホテル業務を取材中のライターだと伝えてありますから」
そんな説明に頷きながら、業務用の巨大なエレベーターへ乗る。
ガコンガコンっと武骨な音を立てて上がっていくその箱の中で、両手を握りしめた。
心臓……バクバクしてる。
ほんとに、会えるだろうか。
どんな反応、するだろう。
話、できるかな。
今さらな事、してるのかもしれない。けど……
汗ばむ手をぎこちなく広げ、お腹に触れた。
前に進むためにも、避けて通れない道だと思うんだ。
「くれぐれも、ご無理はなさらないでくださいね。赤ちゃんに何かあったら、大変ですから」
「はい」
強張った顔を自覚しながら、頷いた。
絶対無茶なことはしない。約束する。
だからほんの少しだけ、付き合ってね……