ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「僕より、こちらのスタッフの方をお願いします。びっくりしたでしょう。可哀そうに」
「は、はいっ畏まりました」
「大丈夫?」
駆け寄ったホテルのスタッフに抱えられ、私もよろめきながら立ち上がる。
「ライっ!!」
バンっとホールのドアが開き、シンシアが現れた。
「何があったの!? なんだか、すごい音がしたってスタッフが……」
駆け寄ってくる彼女を、ライアンは両手を広げて出迎える。
「あぁ心配しないで。ちょっと花瓶が倒れちゃってね」
親密そうに体を寄せ合う2人。
けど――もう、動揺なんてしない。
気づいたから。
彼が、シンシアの目から私を守ろうとしていることに。
一瞬だけ。
流れてきた彼の視線が、言ってるもの。
早く行って、と。
この場に私がいるって彼女にバレると困ったことになる、そういうことなんだろう。
素早く頷き返した私は、大人しくスタッフに従い、会場を後にした。