ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「ほんとに病院行かなくて平気ですか?」
地下のロッカールーム。
自分の服へ着替える私を、井上さんが心配そうにのぞき込む。
「大丈夫です。ちょうど明日が検診なので、診てもらえますし」
キズは、割れたシャンパングラスで足を浅く切っただけだし。
お腹にも痛みはない。
ライアンが守ってくれたおかげだ。
「あの……ライア……リーさんは大丈夫だったんでしょうか」
「えぇ、今医務室にいらっしゃいますけど、軽い打撲ということでした。しばらく腫れるかもしれませんが、骨に異常はないようだと」
「よかった……」
ホッと全身から力が抜けた。
彼にもしものことがあったらと想像するだけで、ゾッとする。
「真杉さんにも恐ろしい思いをさせてしまって、申し訳ありませんでした。酔っぱらったお客様が、つい寄りかかってしまわれたそうなんです」
「そうですか」
酔っぱらったお客……
記憶にないけど、あれだけの人がいたんだから無理もないか。
「先ほどご本人から、謝罪と弁償のお申し出がありまして。もし真杉さんがよろしければ、このまま示談ということにさせていただきたいんですけれど……」
「もちろんです。私の方は構いません。もともと私のわがままで参加させていただいたわけですし」