ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
そう言うと、井上さんが恐縮したように頭を下げた。
「ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ本当にお世話になりました」
とにかく、赤ちゃんが無事で本当によかった……
さぁ帰ろう。
と、帰り支度を再開した。
その時。
BBBB……
携帯のバイブ音。
井上さんのものだったようで、「ちょっと失礼いたします」と断った彼女は、ポケットから取り出した携帯で話し始める。
「えぇ、こちらは大丈夫よ。……え? まぁそう、わかったわ。ありがとう」
何事かをやりとりして、話はすぐに終わったようだった。
携帯を下ろした井上さんが、私へと向き直って――
「真杉さん」
「はい?」
少女のようにニコニコと、微笑んだ。