ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

そう言うと、井上さんが恐縮したように頭を下げた。
「ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ本当にお世話になりました」


とにかく、赤ちゃんが無事で本当によかった……

さぁ帰ろう。
と、帰り支度を再開した。

その時。


BBBB……


携帯のバイブ音。
井上さんのものだったようで、「ちょっと失礼いたします」と断った彼女は、ポケットから取り出した携帯で話し始める。


「えぇ、こちらは大丈夫よ。……え? まぁそう、わかったわ。ありがとう」

何事かをやりとりして、話はすぐに終わったようだった。
携帯を下ろした井上さんが、私へと向き直って――

「真杉さん」

「はい?」

少女のようにニコニコと、微笑んだ。


< 159 / 394 >

この作品をシェア

pagetop