ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

――帰りにフロントへ寄ってくださいますか? お預かりしたものがあるそうなんです。リーさんから。

井上さんの言葉に従って。
着替えを済ませた私は、フロントデスクへドキドキしながら近づいた。


ライアンからって……なんだろう?

「あのぅ……真杉と申しますが」


パソコンから顔を上げた女性スタッフが、私の姿を認めるなり、パッと顔を綻ばせた。

「お待ちしておりました。花瓶の下敷きになりそうになったスタッフ、ってあなたのことですよね?」

ウキウキしたような声に、若干驚きながら頷くと。

「怖い思いをさせてしまったから、お詫びにって。騒がれるといけないから、こっそり渡してくれって、ご自分で持ってこられて。素敵な方ですよねえ」

「ちょっとお待ちくださいね」と一旦奥へ引っ込んだ彼女が、戻ってくる。


その手にあったのは……花?
シンプルなビニールに包まれた、――


「っ!!」


刹那。
両腕で、自分の身体をきつく抱きしめていた。


それでも全身が、抑えきれない感情に震えだしてしまう。

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