ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】


それは、深紅の薔薇だった。たった1本だけ。


遠慮がちに開き始めたばかりの、可憐な花弁を瞬きも忘れて見つめたまま。
記憶をたどる。


まだ付き合う前だ。
彼が、同じものを贈ってくれたことがある。


その時に知った。
薔薇には、贈る本数にも意味があること。


「え、どうしたんですか? 大丈夫ですか?」

焦ったような声に、平気だと笑いながら。
潤む視界の中でそれを受け取り、胸に引き寄せた。


ねえ、ライアン。
私はもう大丈夫。

何があっても、信じてるから。
あなたのこと。



1本の薔薇、その意味は――「あなたしかいない」



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