ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

そうだ、タクシー乗り場でおばあさんが倒れて、誰か呼んでこなくちゃって病院に戻って……ロビーを歩いてたナースさんに助けを求めたんだった。
それが彼女だったっけ。

ようやく思い出して、「あの時は、ありがとうございました」と頭を下げる。


「お礼を言うのはこっちです。妊婦さんなんでしょう? 走ったりして大丈夫だったかしらって、おばあちゃん気にしてましたよ」

「はい、大丈夫です。あのおばあさん、どうされてます?」

「もう退院されました。通院は続けてらっしゃいますけどね」

夜間巡視のたびに、起きてて飴をくれるんですよ。
退院してくれて、ホッとしました。

大げさに眉を下げるナースさんにつられて笑いながら。
そうそうあの時も、巾着袋にたくさんのど飴が入ってたっけ、と思い出した。

ぶちまけちゃって、拾うの大変だったな。


……ちょっと待って。落とし物……



唐突に一つのアイディアが浮かんで、チラリとさりげなく、彼女を伺った。



「実は私、さっき駐車場でこのペンを拾ったんです」


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