ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

――諦めなさい。彼は、リーズグループ次期総帥となるべきお人だ。住む世界が違う。


真上から降ってきた声に顔を上げると。
フチなし眼鏡をかけた、スーツ姿の男性……

――あなた、は……

――張理勇ですよ。お忘れですか。

――違う。あなたは張さんじゃない。ニセモノでしょう! 絶対正体を突き止めてやるんだから!

――私の正体? あなたこそ、本性を現したらどうです? 金目当てで我らがライアン様を誑かした魔女のくせに。

――何言ってるの!? 私は、私は、お金なんか……っ!!




パチっと目を開けると……そこは、寝室だった。
カーテンの隙間から洩れた光が、もう朝であることを伝えてる。

夢、か……


その内容をはっきりと思い出してしまい、一気に気分が沈む。

嫌だな。
ライアンが、他の女性を腕に抱いてる夢を見るなんて。

原因は……やっぱりあのコースター、だろうな。


ため息をついて、寝返りをうつと。
広いベッドにはもう、彼の姿はなかった。

< 17 / 394 >

この作品をシェア

pagetop