ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
――諦めなさい。彼は、リーズグループ次期総帥となるべきお人だ。住む世界が違う。
真上から降ってきた声に顔を上げると。
フチなし眼鏡をかけた、スーツ姿の男性……
――あなた、は……
――張理勇ですよ。お忘れですか。
――違う。あなたは張さんじゃない。ニセモノでしょう! 絶対正体を突き止めてやるんだから!
――私の正体? あなたこそ、本性を現したらどうです? 金目当てで我らがライアン様を誑かした魔女のくせに。
――何言ってるの!? 私は、私は、お金なんか……っ!!
パチっと目を開けると……そこは、寝室だった。
カーテンの隙間から洩れた光が、もう朝であることを伝えてる。
夢、か……
その内容をはっきりと思い出してしまい、一気に気分が沈む。
嫌だな。
ライアンが、他の女性を腕に抱いてる夢を見るなんて。
原因は……やっぱりあのコースター、だろうな。
ため息をついて、寝返りをうつと。
広いベッドにはもう、彼の姿はなかった。