ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
カバンを探って、スケジュール帳から使い慣れたペンを抜き取った。
「落とした方、すごく高級そうなスーツの男性だったんですけど、ここから入って行かれたようで。スタッフの中に、思い当たるような人いませんか?」
差し出したのは、衝動買いしてしまった、キャラクターもののペン。
マロマロンという、丸っこい犬がついたやつだ。
高級そうなスーツ、と自分で言ってしまってから、そのアイテムとのギャップに失敗した、と思ったけど……もう遅い。
「えー……スーツ、ですか? 事務局の人かな。でも今日土曜だし、お休みだと思うけど……しかも、高級そうな、でしょう?」
ペンをマジマジと眺めて、彼女が首をひねる。
「こんなペン、そんな男が持つかなぁ」
……う。
やっぱりこのペンじゃ無理があったか。
こっそりため息をついたんだけど――
「あ……もしかしたら、スタッフじゃないかも」
意外な言葉が聞こえた。
「スタッフ、じゃない?」
聞き返すと、「内緒なんですけどね」と、彼女がぐっと顔を寄せてきた。
「この裏口を入ってすぐのところに、エレベーターがあるんです。最上階のVIPルーム直通の」