ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「ナースさんって、すごいですよね。患者さんだけじゃなくて、家族の好みまでご存知なんて」
「えー家族は無理ですよ、さすがに」
「だってさっき、こんな可愛いペン男性は持つかなっておっしゃった後、秘書さんのことを思い出してくださったでしょ? それってつまり、その秘書の方だったらこういう類のペンを好みそうだって、ご存知だったってことですよね?」
「あぁ違うの。秘書さんは、普通の方ですよ。でも、社長の方が……」
そこで、少し言い淀んでから。
彼女は「ここだけの話ですよ?」と前置きした。
「ぬいぐるみの山なんですよ、VIPルームの中。長期入院だから、居心地よく室内を整えたいって気持ちはわからなくもないけど。大企業のトップって変わり者が多いのかなって、みんなドン引きしてるくらい。秘書だったら、雇い主の好みは当然知ってるだろうし、彼女に気に入られようとしてこういうペン持っててもおかしくないなぁって思って」
さらさらと流れていく台詞を、無我夢中で頭の中に焼き付けた。
長期入院……大企業のトップ……雇い主……彼女……
つまりVIPルームにいるのは、女性社長だ。