ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「ライアンが、来てるの?」
半信半疑で聞く私に、カメラをいじっていた雅樹が、後ろの液晶画面を拡大して見せてくれた。
「さっき、会場入りしてた」
純白のシェフコートを纏ったサムさんの隣、スーツ姿で歩いているのは確かにライアンだった。
「どうして彼が……?」
「ずいぶん前から、決まってたそうなんだよ。通訳であいつが参加すること」
「通訳?」
「ベルナードさんが個人的に頼んでたみたいで。でも、あいつがあんな有名になっちまっただろ。それで編集部もギリギリまで悩んでて。結局本人が行くって言って、決定したらしい」
そっか……それでか、と腑に落ちた。
さっきの異常なほどの黄色い歓声。
サムさんとライアンのツーショットなんて、そりゃあ大興奮必至というものよね。
「やっぱりお前らさ、別れちまったわけ?」
交際宣言のニュースが気になってるんだろう。
雅樹の心配そうな顔を見返して、小さく笑ってみせた。
「別れてないよ。ちょっと距離おいてるだけ」