ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「でも……」

納得できないという風に、雅樹は眉を寄せるけど。
これ以上は、私にも説明のしようがない。
ただ、信じるしかないんだ。


カメラにもう一度、目を落として。
サムさんと談笑する元気そうな姿に一安心。
昨夜のケガ、もう痛んでないかな。

小さな画面に映る、彼の笑顔を目に焼き付ける。
そして、その瞳が自分を映していないことに、きゅっと切なくなる。

こんなに近くにいるのにな。
触れることも、声をかけることもできないなんて――

じくりと疼く胸に手を当てて、呼吸を整える。
ダメダメ、今は感傷に浸ってる場合じゃない。

それよりも!

せっかく同じ会場内に彼がいるんだし、この状況をなんとか利用できないだろうか。
どうにかして、女性社長のことを伝えられたら――


……でも。
写真を見ると、マスコミだろうか、2人の周囲はたくさんの人が取り巻いてる。この中の誰かが、ライアンを見張ってないとも限らない。

直接近づくのは、避けた方がいいだろうな。
私の顔、知られてるかもしれないし。

じゃあ……誰か関係ない人に伝言を頼む、とか……この際アナログな方法の方が確実かも?


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