ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
さすが柴田さんだな。
私が彼女の立場だったら……同じように言えるだろうか?
こんな澄んだ目で、相手を見つめられる?
こういう女性になりたいなって、この人に会うたびに思う。
もったいないなぁ。
大河原さんに紹介したいくらいなんだけど……
彼女もまた、忘れられない人がいるって言ってたし。
きっと余計なお世話だろうな。
「そういえば柴田さん、さっき私のこと探してるっておっしゃってましたけど……?」
彼女の言葉を思い出し、何か用事だったんだろうか、と聞くと。
柴田さんが、「そうそう、そうなの!」と両手を合わせた。
「そういうことなら、余計にこれ、渡さないとね」
そう言って、ジャケットのポケットから紙切れをペラっと取り出した。
「これ……観覧券、ですか?」
「そうよ。サミュエル・ベルナード氏のライブクッキングショーのね。私実は彼のファンでね、編集部に無理言って手に入れたんだけど。これ、あなたに譲るわ」
「へ?」
「さっき小耳にはさんだの。通訳でショーに参加するって、御曹司――あなたの、彼が」