ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「え」

今度は私の方が言葉を失ってしまう番。

でも……そういえば。
いつだったか、ねだられてライアンの写真、見せたことあったっけ……
諸々の報道、一体どういう気持ちで聞いていただろうかと、冷や汗が滲む思いだった。

「本当に彼が報道されてるような女ったらしだったら、私も反対するけど。でも、なんだか違うような気がして。あくまで、あなたの話から私が受けた印象、だけどね。だから」

柴田さんが、私を諭すように覗き込んだ。

「お腹の赤ちゃんのためにも、ちゃんと話し合った方がいいわ。まだ好きなんでしょう?」

これも、持って行って。
と、続けて渡されたのはスポンサーズパス。

「これがあれば、控室にも入れてもらえるはずだから。ショーの後、話せると思う」

胸の奥が、明かりを灯したように温かくなる。
これを渡すために一生懸命私のこと探してくれてたんだ、ってわかったから。
彼女らしくもなく、走り回って。

どうしよう。
私の周り、素敵な人が多すぎだ――……

こみ上げる熱をぐっとこらえて、顔を上げた。


「お気持ちは嬉しいんですが、これは受け取れないんです。その代わり、柴田さんにお願いしたいことがあって――」


< 186 / 394 >

この作品をシェア

pagetop