ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
メールでいいって言ったのに、どうしたんだろう?
もしかして、何か……と不安になりながら、通話をオンにした。
「もしもしっ……柴田さん?」
『あぁ真杉さん?』
「あの、何かありましたかっ!?」
『それがねえ……』
口ごもる柴田さん。
その口調は重たくて、ドクリと胸が脈打った。
やっぱり何か、不測の事態でも起こったんだろうか。
ライアンに会えなかった?
『ちょっとこれ、電話じゃ話しにくいことで……、悪いんだけど今から言う場所に来てくれる?』
「は、はいっどこに行けばいいですか!?」
◇◇◇◇
柴田さんが指定してきたのは、バックヤードにあるミーティングルームと呼ばれる部屋の一つだった。
予備の椅子や机なんかが折り重なって置かれた、狭い廊下を抜けた先。
言われた通り、「備品1」と手書きの紙が貼られたドアを開ける。
スイッチを入れるとパッと明るくなり、段ボールが積みあがった室内全体が見て取れた。
10畳くらい、かな。
出展企業が倉庫のように使える部屋らしい。
パイプ椅子が目に入ったけど、なんだか落ち着かなくて、その場を行ったり来たり。
手紙、うまく渡せなかったのかな。
もしかして落とした?
それとも……シンシア側の誰かに邪魔されたとか。