ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

そんな……

カタカタカタ……
小刻みに揺れだす体を、彼がギュッときつく抱いてくれる。

「ごめん、こんな話やっぱり聞かせるんじゃなかったね」

「へ、平気。私が話してってお願いしたんだし……」
震える声で言って、彼へと身体を摺り寄せた。

彼が何も言ってくれなかったのは、
こんな風に私が怯えることを見越したからなんだろう。


じゃあ……もしかして。

「あの、イライザ・バトンとデートしてたっていうのは……?」
「もちろん、シンシアの目を君から逸らすための、ダミーだよ」
「ダミー……」

「イライザには昔、恋人との仲を取り持ってあげたことがあってね。勝手だけど、あの時の借りを返してくれって頼んで、恋人っぽく演じてもらったんだ。シンシアがライバル心を燃やすような正反対のタイプだから、適役だと思って」

「他の、女の子たちも?」

若干滲んでしまった嫉妬に気づかれませんようにと祈りながら聞くと、
彼はあっさり頷いた。

「飛鳥とは別れたって、シンシアに信じ込ませるためにね。もちろん、誓って食事以上のことはしてないよ?」

そういうことだったんだ……
全身から、どっと力が抜けた。

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