ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「女性社長なら、心当たりあるよ」
耳元でぼそっと声がして、「え」と顔だけ後ろへ向けた。
「最上悦子(もがみえつこ)。リーズニッポンの社長だ。確か、体調不良で最近は公の場に出てこないって聞いてる」
「もしかして、入院してるのかも?」
敬心セントラル病院のVIPルームに?
期待を込めて見つめる先、ライアンが頷いた。
「可能性はあるね。あの病院には、リーズニッポンも出資してたはずだから。VIPルームを用意させるくらい、わけないと思う」
「じゃあ――」
今すぐ病院まで行って、確かめたくなった私の心を見透かすように。
「君は、ここまでだ」
ぴしゃりと言われてしまう。
「あとは僕に任せてくれるね?」
「う……ぅ、はい」
重なった2人の手のひらの下、愛おしい膨らみを感じながら、
大人しく頷いた。
待つだけなんて、性に合わないけど。
赤ちゃんのためだ。
ここは、我慢しなくちゃ。