ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「そろそろ行こうか。立てる?」

「ん……平気」

ライアンに支えられながら、なんとか立ち上がった。
腕時計に目を落とすと……随分経っちゃってる。

「飛鳥はこの後、どうするの?」

「ええと、もう帰ってもいいんだけど……その前に柴田さんにお礼だけ言いに行きたくて。お世話になったから」

「ほんとだね。僕も後で言っておこう」

彼女がお節介焼いてくれなかったら、この時間はなかったわけで。
彼の話を聞くのも、もっと先だったはず。
ずっと不安を抱えたまま……

顔を上げると――彼も同じことを考えてたんだろうか、視線が宙で絡み合い。
もう一度、引き寄せられるようにキスをした。

「ん、……」

唇を合わせるだけ。
それだけで、どうしてこんなに幸せな気分になるのかな。


「困るな……」
「困る?」
うっとり閉じていた瞼を持ち上げた。

「お世話になった人が多すぎて、ベビーの名前を誰からもらったらいいかわからない」

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