ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「どうかしたの?」
『あいつだ……』
緊張した声が答える。
あいつって誰? と、聞き返す間もなく、視線の先の長身がいきなり駆けだした。
「ちょっ……!」
『あいつだよ。覚えてるかい? オオタフーズの撮影の時、スタジオを見張っていた若い男がいたって。飛鳥がSDかもしれないって、言ってたやつがいるだろう』
そういえば。
その後見かけないから、すっかり忘れてたけど……
記憶からそのやりとりを掘り起こしているうちに、彼の姿はもう視界から消えていた。
『黒のベースボールキャップ、細身の男だ。間違いない』
通話中の携帯から、揺れる声と足音が聞こえる。
『もしかしたら、シンシアの背後関係がわかるかもしれない。一度切るよ。また連絡するから』
「わわかった。気を付けて!」
通話を切って。
はぁあっと、いつの間にか止めていた息を吐き出した。
どうか、ライアンが彼を捕まえられますように。
そして少しでももつれた糸がほぐれますように、と祈った。
「真杉飛鳥さん?」