ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

石塚さんに案内されたのは会場に隣接する駐車場だった。
お土産の袋を抱えてマイカーを目指す、たくさんの人に紛れながら歩いて――


「こちらです」

たどり着いた先にあったのは、これまたいかにも、な黒塗りの高級車。
どうしてまぁ、社長っていうのは似たような雰囲気の車に乗りたがるんだろ。

密かに嘆息する私の前で、石塚さんが恭しく後部座席のドアを開けた。

カツン……

降り立ったのは、恰幅のいい中年の男性だ。

「お会いできて、光栄ですよ。真杉飛鳥さん。Eトレーディング代表の、最上恵一(もがみけいいち)です」

メンズエステに相当通ってるにちがいない、つるりと整った顔を綻ばせたその人が、手を差し出してくる。

最上……?
ついさっき、ライアンから聞いたばかりの名前も、最上だった。
同じ姓は、偶然だろうか?

考えながら、つられるように手を――出しかけて、ピタリと止めた。

袖口にキラリと光る、ダイヤのカフス。
これ、どこかで……

チカチカと、頭のどこかで何かが瞬いてる。
それは、決して快い点滅じゃなくて。
むしろ……反対。

ざわざわと落ち着かない胸の内を、自分で探る。
どうして?

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