ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
手を止めたまま、目まぐるしく考える私を眺めていた最上氏は、楽しそうに身体を揺らして笑った。
「……なるほど、君は頭がいい」
「っ!!」
もう一度聞いたその声に、ようやく記憶が反応した。
シンシアの、パーティーだ……!
――ありがとう。でも大丈夫だよ、飲みすぎるなと秘書にうるさく言われていてね。
そしてもう一つ、同時に稲妻のように閃いた。
以前見かけたシンシアの雑誌記事――『Eトレーディングプレゼンツ・日本ツアー直前インタビュー』……
つまり、この男は彼女の……
声をあげようとして。
ゾワリと、全身が総毛立った。
背中に、何かが当たっている。
固い……何か。刃物ほど尖ってはいなくて。
「一緒に、企画の打ち合わせなどいたしましょうか、真杉さん」
背後から響く、石塚さんの声。
でもそこにさっきまでの柔和さは、1ミリグラムも含まれていなかった。
「おとなしく車に乗っていただけますね? お一人だけの身体じゃないんだ。賢いママなら、わかるでしょう?」
冷たい汗が、背中を滑り落ちた。