ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

――ほんの数回、セックスすればいいだけよ。わたしが妊娠するまで。それで、あなたが老板を殺した犯人だってことは、黙っててあげる。ね、悪い話じゃないでしょ?

まさか、シンシアは……後継者の噂を知っている?

可能性は、確かにある。
彼女の交友関係は広く、各界に跨っているし。
その中に、リーズグループに関係する誰かがいたとしてもおかしくない。

沈黙したまま慌ただしく考えている間に――

彼女の手はするりとジャケットの下へもぐりこみ。
シャツの上から、僕の身体を撫でていた。

――数回、じゃなくてもいいけど?

くすくす、熟しすぎの林檎のような唇が誘うように蠢く。
ゾクリと、背筋が粟立った。

「やめろっ」

無理やり引きはがす。
すると、彼女の手に……

――あら、なにかしら、これ。

コースターだった。
内ポケットから、抜き取られたらしい。

さっきまでいた店で、書き込んでいたやつだ。
そこには、ベビーの……

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