ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
それからは、無我夢中だった。
片っ端から女友達に連絡をとった。
来日した昔の同級生や同僚、その姉妹にまで声をかけ。
シンシアの目につくように飲み歩いた。
彼女の頭の中から、飛鳥の姿を完全に消し去りたくて。
――ねえ、キスして?
強請ってくれたのは、いつだっただろう。
飛鳥が不安を感じていることは気づいていたけど。
触れたら、愛し合ったら、離れられなくなる。
全部放り出して、打ち明けてしまいたくなる。
でも。
危険が迫ってるかもしれない、ベビーが狙われるかもしれない、そんなこと、今の君に話せるわけない――そう思って……
「Wowっっ!」
混雑の中でベビーカーにぶつかりそうになり、間一髪で体を翻した。
「申し訳ありません」
謝ると、僕より若そうな女性が「い、いえっ」と頬を染めてる。
その手には、優羽より少し年上くらいの女の子がしがみついていて。
外国人が珍しいんだろうか、目をまん丸にしてこっちを見上げてる。
可愛いな。
「びっくりさせて、ごめんね?」
目線を合わせて言い、頭を撫でようとすると、恥ずかしそうにママのスカートの後ろへ隠れてしまった。