ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「一つ、お聞きしていいですか?」

何か引き延ばせるような話を、と思いを巡らせながら口を開く。

「最上って名乗ってたけど、あなたはリーズニッポンの最上悦子社長と関係があるんですか?」

向かい側のソファにどかっと座った男が、「ほぅ」と声を上げる。

「妻を知ってるのか。さすが優秀な代理店マンだな」

え……妻? つまり、2人は……
「夫婦?」

「まぁ、法律上はそうだな。夫婦らしいことなど、久しくしてないが」
自嘲気味に肩をすくめる最上を見つめながら、頭の中で慌ただしく関係図を描く。

最上悦子の夫がEトレーディングの社長で、私に接触してきたってことは。
やっぱり今回のことは、彼女が計画したってことよね。
シンシアの妊娠も……?
でも……何のために?

目まぐるしく考える私の前で、最上が薄っぺらい笑みを浮かべた。

「ライアン・リー、彼の方がよほど夫らしいと言えるな。身重の恋人を守るために、あんな芝居までうつとは。すっかり騙されたよ。君たちは完全に別れたと思い込んでいた」

思い込んでいた……
どうしてバレたんだろう?

「君たちの関係を揺さぶるために、こっちもいろいろ計画を練っていたんだがね。その必要もなかったかと油断していた」

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