ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「あの時彼は、身体をはって君を守った。ただ守っただけじゃない、わずかな衝撃も与えなかった。そして会場の視線から庇うように逃がした。それでピンときたんだよ。君たちは別れてなどいない。君のお腹にいるのは彼の子で、彼はそれを知りながら隠してる――次期総帥を巡る騒動から、君を守るために」
スカートをぐしゃっと握り締めて、衝動を堪えた。
私のとった行動が、引き金になってたなんて。
あんなことさえしなかったら……
彼を信じて、待っていれば……!
「さて、ご気分はどうかな? 腹の中にまんまと金の卵を宿した、今のご気分は? ええ? さしずめ我が世の春、といったところか?」
わっはっはと響き渡る笑い声を聞き流して、お腹をかばった。
「……この子は、次期総帥でも金の卵でもない。私とライアンの大切な赤ちゃんです」
「まぁそうツンケンすることないだろう。わたしはね、リーズグループの末端に関わる者として、組織の未来を憂えているだけなんだ。後継者が、まだ生まれてもいない赤ん坊とは! それが、総帥のワガママ……たった一人の男を手に入れるためだというんだから、組織の私物化も甚だしいと思わんかね? もはやあの方にトップに立つ資格はない。早々に引退していただかねば」
この人たち……あの噂を利用して、クーデターを起こすつもりってこと?
たどり着いた答えに、ジワリと汗が滲んだ。
「それだけライアンの力を買ってるってことでしょう。やり方は間違ってると思うけど、その評価は正しいと思います」