ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
惚れた欲目、かもしれないけど……彼は魅力的な人だ。
人間的にも、能力的にも。
自分の跡を託したいって考えた総帥の気持ちも、わかる気がする。
そう反論しかけ……けれどその口を閉じた。
最上の唇が、下卑た笑みで歪んでいることに気づいたから。
「本当に、天然というか能天気な娘さんだ。あの2人に、どんな噂が出回っているかも知らないで」
「うわさ?」
そういえば……マリーさんも言ってたっけ。
――総帥がライアン様をお気に召してらっしゃることは、昔から内部では有名な話ですし。妙な噂まであったくらい……。
「一体どういうこと――」
「ねえそんな話どうでもいいでしょう。さっさと話をつけましょうよ」
それまで黙って聞いていたシンシアが突然苛立ったように遮り。
ひらりとデスクから降りて私の前に立った。
「で、いくらほしいの?」
「…………は?」
彼女の視線がこっちを睨めつけているから、最後の言葉はきっと、私に向けたものなんだろうけど。
いくら?
どうしていきなりお金の話になるんだろう?