ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「何バカみたいに口開けてるのよ。言えばいいじゃない、正直に。欲しいだけ。こっちはちゃんと用意してるんだから」
「……なんのお金?」
「あのねえ、そういう駆け引きはいらないの。あんたの言い値払うって言ってんのよ。さっさとおっしゃい。1千万くらいあればいい?」
「いっせんまん!? さ……さっきから一体何の値段の話、してるの?」
チッと舌打ちの音がして、シンシアの肩が大きく上下した。
「あぁやだやだ、イイコぶりっ子っていうの? 止めましょうよそういうの。時間の無駄だから。赤ん坊を堕ろす値段に決まってるじゃない」
「あ、赤ちゃんを……!? 何言ってるの?」
あっけにとられる私を見つめて、グロスをたっぷり含んだ唇がせせら笑うように弧を描いた。
「何驚いてるのよ。ライを騙して、計画的に妊娠した魔女のくせに」
「だ、騙す……?」
「あんたも知ってたんでしょ、後継者の話。それで、妊娠しやすい日を狙って、彼を誘ったのよね?」
「ちょっ……止めて! そんなことするわけないでしょう!」
とっさに両手でお腹を覆っていた。
赤ちゃんに、そんな汚い話を聞かせたくなくて。
「まぁ、どっちでもいいわ。わざとでもなんでも。とにかくね、その子には産まれてもらっちゃ困るのよ。次期総帥を産むのは、わたしなんだから」