ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「ねえ……なんだか食材、多くない?」
「うん、4人分あるからね」
「は!? なにそれ!」
「だって、飛鳥はベビーと合わせて、2人分食べないといけないだろ? 足りないと困るじゃないか」
「大人2人分なんて、食べるわけないでしょ!?」
「え、そうなの?」
「そうよっ!」
隣席の家族連れに大笑いされながら、
食べて笑って、また食べて……
このまま時間が止まってしまえばいいのにと思うくらい、幸せだった。
◇◇◇◇
横浜でベビーグッズを見たりして、
のんびり都内に戻ってきた時には、もう太陽はすっかり沈んでいた。
ぎっしり連なる車列に紛れ、私がリクエストした池袋のサンシャイン水族館へと、SUVが走っていく。
都内に入ったくらいから、だろうか。
彼の口数が減っていって……
水族館に入るころには、黙りがちになっていた。
何を考えてるのか、なんとなくわかったから。
私も何も言わなかった。
何も言わずに、指を絡めるように彼の手を握って、寄り添うように歩いた。