ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

和んだところで、車は発進。

拓巳さんと奈央さんは帰り道のルートを相談し始めた。
そんな2人の会話を遠くに聞きながら、外の風景へ目をやって。

考えてしまうのは――ライアンのこと。
今更だけど、今日、彼も来れたらよかったのになって。

吾妻夫婦のラブラブっぷりを間近に見て、羨ましくなっちゃったのかも。

『飛鳥』、って私を呼ぶ彼の声が聞きたくて、
手の中の携帯を見下ろすと、送ったメッセージはまだ未読のままだ。

今、何してるんだろう?

東京観光、盛り上がってるんだろうか?
携帯の確認もできないほど……?


「飛鳥さんは、どこか寄りたいところありますか? 買い物とか」
「あ、大丈夫です。どこか適当な駅に下ろしてもらえればそれで……」
「ダメですよ。ちゃんと家の前まで送らないと、あいつに怒られるから」

拓巳さんに言われて、「すみません」って首をすくめた。
「せっかくのお休みなのに付き合わせちゃって、疲れたんじゃないですか? お仕事、毎日忙しいんでしょう?」

「いえいえ、ちょうど今ひと段落してて、会社は割と落ち着いてるんですよ」
「そうそう、定時でちゃんと帰ってこれるもんね」


さらりと交わされた会話の内容に、ドキンと心臓が波打った。

落ち着いてる?
定時で?

だって、ライアンは毎日忙しいって、帰りも遅くて……
どういうこと?

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