ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「へぇすごいな……ほんとに飛んでるみたいに見えるね」

「ここ、ずっとライアンに見せたかったのよね」

私たちが見上げたのは、ペンギンの水槽だ。
ライトアップされた青い水槽は、頭上に設置されていて。
黒い夜空を背景に、幻想的な空間を作り出している。

優雅に水をかくペンギンは、本当に大空を飛ぶ鳥みたい。


行きかう彼らを飽きることなく見つめながら、想いを馳せる。

――飛べない鳥は、僕の方だ。

昔、そうつぶやいた彼へと。


もう彼は、飛べない鳥なんかじゃない。
自分の力で、翼で、強く空を目指せる人だ。

だから、大丈夫。
きっと大丈夫だ。今、この手を放しても――


絡めていた指から、そっと力を抜く。
すぐに気づいたライアンが、「ん?」と見下ろしてきた。

迷いを消すように、自分を励ますように、すぅっと深く息を吸う。
そして。


「お土産は、マーライオンチョコね」


隣を見ると、「飛鳥……」と絶句したまま、翡翠の瞳が大きく開いてる。


「ナッツ入りでよろしく」

そう言って、私は精一杯の笑顔を作った。

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