ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
本当は、怖い。
行ってほしくない。
けど、行かないでなんて言えない。
彼を困らせたくない。
これは、私や赤ちゃんのためでもあるわけだから。
ブルっと震えた肩が、……ぐいっと抱きしめられた。
「ら、ライア……ここ、他の人も、いるから……っ」
焦ってもがく私を、ライアンは優しく、でも抗うことのできない強さで自分の方へと引き寄せる。
「暗いし、みんな気にしてないよ」
「でも……」
周囲を確認しようにも、後頭部を押さえられていて、固い胸に埋めた顔は動かすこともままならない。
わずかに目だけを上げて、彼の首筋から顎、精悍な頬……色気を漂わせる美貌に見惚れるだけだ。
「ベビーの名前、最高のやつを考えておくよ」
「漢字、無理して使わなくていいから」
口をとがらせて言うと、「それは外せないな」くくっと温かな身体が振動した。
「飛鳥」
「ん?」
「これ、受け取ってくれる?」
言われて……少し体を離すと。
彼が私の手を取り、その上に小さな箱を乗せた。
「これ……は?」