ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

手のひらにすっぽり収まる、ブルーベルベットのギフトボックス。
明らかに指輪が入っているとわかるサイズのそれに、私は戸惑いつつ視線を揺らした。

「ライアン、プレゼントなんて私……」

いらないのに。
言いかけた私の唇を、彼の人差し指が封じた。

「これはバースデープレゼントじゃないよ。渡せなかった、僕の気持ちだ」
「ライアンの、気持ち……?」

首を傾げる私の前で、長い指が箱を開ける。

現れたのは――清廉な輝きを放つ、プラチナのリング。

翼の形にカーブしていて、そこにダイヤとサファイアが埋め込まれてて……
もう、ため息しか出ない美しさだった。


「きれい……」

「気に入った? 大空を飛ぶ白鳥……飛鳥のイメージで作ってもらったんだよ」

「は、白鳥っ? わ私が?」


蓋の裏、その刻印は、“TOWAZI”(トワズ)。

――エンゲージリングにって、デザイン依頼から承ったんです。サファイアとダイヤを使った、……ちょっとシンプルすぎるような気もするけど、でもすっごく素敵なリングで。


眼裏にこみ上げる熱いものを、ぐっと堪えた。

私のための、リングだったんだ……

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