ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

それから私たちは、久しぶりに以前住んでいたマンションに帰宅。


玄関に入るなり、私の身体はふわりと宙に浮く。

「ちょ、ちょ……なにすっ……」

「何するって、決まってるだろ。わかってるくせに」


とろりと蕩けそうな、艶めいた眼差しで迫られて。
全然準備のできていなかった私は、ジタバタともがいた。

い、いやそりゃ私だって、したいとは思ってたけど。
入院中、全然手を出してこないから、実はちょっとモヤモヤしてたけど!

荷物も解いてないし、っていうか、まだ車に積んだままのものもあるし。
他にもほら、シャワー浴びたりとか、いろいろ……


アワアワと意味不明な言葉を口走る私をよそに、彼の足は迷いなく寝室を目指す。


そして……そっと。
丁寧に私をベッドに下ろした後。
服の上から私のお腹に唇を落として、何かをボソボソとつぶやいた。

「……何、やってるの?」と首を傾げると。
「パパとママは今夜アッチッチだから、静かに寝ててねって言ったんだ」

大真面目な顔で言うから、
「どこでそんな日本語覚えたのよ?」って、笑いを堪えるのに苦労した。


でも……

余裕ぶっていられたのもそこまで。


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