ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「今夜は全部僕に任せて。飛鳥はただ、感じてくれればいい」


煽情的な台詞を裏付けるみたいに、彼の指が私の身体へと伸びてくる。

爪先から、ふくらはぎ、さらに上……
浮き上がりそうになる体を、シーツに縋り付いて必死に押しとどめる。

「っ……、ゃ……ぁあっ……」

乱れた呼吸の合間に、自分のものじゃないみたいな喘ぎ声が漏れるけど。
止め方なんて、もうわからない。


こんな夜は、初めてだった。


じっくり、というより執拗に。
焦らされながら繰り返される愛撫に、ゆるやかに高まっていく熱。


全身がそれらにジリジリと炙られ、爪の先まで狂おしいほどの快感が駆け巡っていく。


最後には、確かに彼が私の中へ入ってきたはずなのに。
もうその頃には半分意識が飛んでいて、記憶は朧げだ。

ただ覚えているのは。

くしゃくしゃになったシーツを握り締める自分の手に重なった、彼の大きな手。

そして。
どうか、彼が早く帰ってきますように――……昇りつめながら、祈った言葉。


翌週ライアンはシンガポールへ向けて出発し。
そして、連絡が途絶えた。
< 307 / 394 >

この作品をシェア

pagetop