ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「今夜は全部僕に任せて。飛鳥はただ、感じてくれればいい」
煽情的な台詞を裏付けるみたいに、彼の指が私の身体へと伸びてくる。
爪先から、ふくらはぎ、さらに上……
浮き上がりそうになる体を、シーツに縋り付いて必死に押しとどめる。
「っ……、ゃ……ぁあっ……」
乱れた呼吸の合間に、自分のものじゃないみたいな喘ぎ声が漏れるけど。
止め方なんて、もうわからない。
こんな夜は、初めてだった。
じっくり、というより執拗に。
焦らされながら繰り返される愛撫に、ゆるやかに高まっていく熱。
全身がそれらにジリジリと炙られ、爪の先まで狂おしいほどの快感が駆け巡っていく。
最後には、確かに彼が私の中へ入ってきたはずなのに。
もうその頃には半分意識が飛んでいて、記憶は朧げだ。
ただ覚えているのは。
くしゃくしゃになったシーツを握り締める自分の手に重なった、彼の大きな手。
そして。
どうか、彼が早く帰ってきますように――……昇りつめながら、祈った言葉。
翌週ライアンはシンガポールへ向けて出発し。
そして、連絡が途絶えた。