ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
浮かんだ疑問を、急いで打ち消した。
きっと関わってる案件が違うってことよね。
だから、拓巳さんとは帰宅時間も違うってこと。
きっと、そう。
口の中で独り言ちて――……顔をあげたのは、全くの偶然だった。
その場所がどこかは、覚えてない。
そもそも、知らない場所だった。
でもとにかく私はその時顔をあげて、窓の外、それを見た。
どこかの街角。
ヨーロッパ系の大柄な男性が、歩道を歩いてる。
よく似た金髪……だと思って……息をのんだ。
似てるんじゃない。
本人だ。
ライアンがいた。
表情は、遠くてわからない。
鼓動が再び不気味な音をたてたのは、その腕に女性が抱き着いていたから。
ふわりとなびく長い黒髪に、顔が強張る。
まさか……
息を止めた、ほんの一瞬。
過ぎる間際に、彼女の顔が見えた。
それは――シンシアではなかった。