ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
それから後は、ジェットコースターのように目まぐるしく日々が過ぎた。
ネット回線で各国をつなぎ、連日のように会議、打ち合わせ、また会議。
合間には政府や提携企業の要人との会合に出席し、マリアのレクチャーを受け……
わずかな時間ができると、瞬く間にアポイントが入った。
僕が次期総帥に本決まりだと、ささやかれているらしい。
ご機嫌伺いの列は数カ月先まで途切れませんよ、とマリアが嬉しそうに教えてくれた。
――みんなホッとしてるんですわ。後継者問題は、ずっと懸案事項でしたから。
外堀を埋められつつある、そんな焦りを感じつつも、
未だ僕に反感を持つ連中へ、隙を見せるわけにはいかなくて。
支持してくれるメンバーの足を引っ張るわけにもいかなくて。
寝る間もないほど、ひたすら仕事に打ち込んだ。
そのおかげか、1か月が過ぎる頃には現状を大体把握し終え、次第に周りを見る余裕も生まれたけれど。
それはよかったのか、悪かったのか……
シャッと勢いよく、カーテンを閉めた。
ほどよい明度に落ち着いた室内で、再び椅子へ戻る。
最近、少しでもまどろめば、飛鳥の夢ばかり見る。
愛しい黒い瞳や甘い肌、
絡めた足の、少しひんやりとした温度。
お腹は……ずいぶん大きくなっただろうな。
胎動、っていうんだっけ。もう感じるようになっただろうか。
連絡を寄越さない僕を、きっと恨んでるだろう。