ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
ん……?
“うまく餌を撒いて”“おびき出して”……?
意味深なキーワードを脳が理解するや否や。
反射的にガバッと、上半身をシートから起こしていた。
<僕の子どもを次期総帥にって噂を流したのは、やっぱり君なんだな!?>
《あー……はは、……おっと、そろそろ引き上げるか。勝ちすぎたな》
<ちょっと待て! キングっ!>
《就任会見には顔出してやるよ。じゃあな》
<待て! おいっ!>
ブツリと通話の切れた携帯を、歯ぎしりしながら睨んだ。
あの噂のせいで、僕たちがどれほど振り回されたか……
今更ながらふつふつと怒りがこみあげてくる。
そうだ。こいつはそういうやつだ。
目的のために手段は選ばない。
どうせ、面倒事は僕におしつけてやれとか、そんなとこだろう。
彼も丸くなったのかもしれないなどと、チラッとでも考えた数分前のめでたい自分をぶちのめしてやりたい。
苛立ちながら携帯を内ポケットに戻した時。
運転手が目的地への到着を告げた。