ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
案内されたのは、最上階のVIPルーム。
念入りな身体検査を受けた後、ようやく観音開きのドアが開く。
一歩、二歩、と中へ進み。
背後で閉まるドアの音を聞いてから、ぐるりと見回した。
飛鳥が入院していた部屋も広くて快適だったけど。
ここはケタ違いだ。
ベッドもソファもテーブルも……
シェルリーズのプレジデンシャルスイートか、と突っ込みたくなるような豪奢な内装と設えに若干呆れながら、そこが無人であることを確認して、足を踏み出した。
そこへ。
キィと響く、軽い音。
そちらへ目をやると、バルコニーから車いすに座った老人が入ってきた――フレデリック・リー総帥、その人だった。
痩せた……
それが、第一印象。
ガウンから覗く、枯れ木のように細い手足に、衝撃を顔に出さないようにするのが大変だった。
こけた頬は土気色で、その表情は暗く。
真っ黒だった髪は、染めたように白一色。
乾ききった肌は、いくつものひび割れた皺を刻んでいて……
まだ60代だとは、とても思えない風貌だった。