ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
<これは何です?>
<お前の結婚相手だ>
<っ……>
今度こそ、声が出なかった。
きつく、両脇で拳を握り締める。
<式は盛大にやれ。ウェストミンスターでもヴェルサイユでも構わん。費用はすべてわしが出す。わしが認めた相手だと、全世界に知らしめてやれ>
<総帥、僕は――>
<取締役会は、わしが黙らせる。お前は何も心配しなくていい。今はホテルからジャックスへ通っているそうだな。あそこに引っ越しなさい。今後、お前の家になる。中は好きに改装して構わないから、必要なものがあれば、執事に言いつけて――>
<やめてくださいっ!>
声を張り上げて、強引に言葉を遮る。
横やりを入れられた総帥は……しかし、気分を害した様子はなかった。
黙ったまま僕へと、促すような視線を向ける。
<……そんなに、怖いですか? 僕のことが>
沈黙が、室内を包んだ。