ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
<みんな誤解してますよね。あなたが僕に抱いている感情は、周りが邪推してるようなものじゃない。あなたはただ、僕が怖いだけなんだ>
<……面白いことを言う。わしは何も、恐れてはおらんが>
総帥の表情は、変らない。さすがだなと思いながら、その変化を見逃すまいと、視線をそらすことなく繰り返した。
<いいえ、あなたは僕が怖いんです。だから、傍に置いて常に監視してないと、心配でたまらないんでしょう? 総帥の椅子をチラつかせるのは、餌のつもりですか。そうすれば僕が、フラフラおびき寄せられてくると思いましたか?>
以前は、まるで興味なんかなかった総帥位。
でも今は……キングの言う通りだ。興味がないと言えばウソになる。
2カ月だけではあるけれど、その仕事に関わるうち、
その緊張感と充実感に、手ごたえを感じ始めていることも確かだ。
これで飛鳥とベビーさえ傍にいてくれたら、このまま流れに乗るのも悪くないと、思わないこともない。
でも……今、確信した。
この人の手の上で、この人の思惑通りには、絶対踊りたくない。
<それとも、本気で僕へすべてを譲るつもりでしたか。従業員たちの人生を僕に負わせ、そうすれば僕を口止めできると思いましたか?>
<何を言っているのか、わからんな>
<認めたらどうですか。ずっと怖かったんでしょう? 僕がいつ口を滑らせてしまうか、わかりませんからね>
迷いは、ない。心はもう、決まってるから。
そして僕は、カードを切る――最後の、ジョーカーだ。
<黄金栄を殺したのが、あなただと>