ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

女性と出かけたって知ったら、私がヤキモチ妬くって心配してるんだろうか。

別にそれくらいのこと、うるさく言ったりしないのに。
隠される方が不安になるんだってば。

モヤモヤしたものを抱えたまま、また慌ただしい1週間が始まりって――あっという間に金曜日。


やっぱり……どう考えても、変だと思う。

もっとはっきり言ってしまうと、距離を置かれてるような気がする。

すれ違いは相変わらずで、キスもハグも、全然ないし。
寝る時はいつも一人分、空間が空いてるし。

しかも、今週に入ってから気づいてしまった。
脱ぎ捨てられた彼の服から、ほのかにお酒や香水の匂いがしてること。
シンシアの香りじゃない。別の。

これじゃ、不安になるなって言う方が難しくない?
だからついに昨夜。

――ねえ、キスして?

夜遅く、ベッドに入ってきた彼に強請ってしまった。

――どうしたの? 飛鳥がおねだりなんて珍しいね。

変わらない麗しい微笑を浮かべながら、あっさり了承してくれたライアンだったけど。

チュッと軽く、唇を啄んで。

――Good night, sweet heart.

もう充分だろとばかり、一瞬で離れてしまった。

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