ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

<漢字、か……なるほど>
ふふふっと総帥は楽しそうに肩を揺らした。

<お前はいろいろと、思い違いをしている。まぁわしも、説明不足ではあったがな>


くるりと車いすを回転させ、彼は僕を真正面から見据えた。

<まず、お前をジエンに預けた理由だ。監視とか口止めとか、そんなことは一度も考えたことはない。あれは……詫びだ>

<は……?>
彼が僕に、一体何を詫びると言うんだろう?

見つめていると、力強い眼光が揺れ。
何かを悔いるように、わずかに伏せられる。

<何も知らないお前を、共犯者に仕立ててしまったことへの詫びだ。せめて新しい良い家族を、と思ってな。ジエンとモニカは、わしが今までに出会った中で一番、子の親となるにふさわしい夫婦だったから>


詫び……それで、僕と父さんを引き合わせた?

そんな可能性は、考えたこともなくて。
呆然と総帥を見つめていると。

<2つ目はこれだ>

思いのほか機敏な動作で車いすを操り、総帥はリビングへと向かう。
そして自ら茶封筒を手に取り、<中を見てみなさい>と差し出した。

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