ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
あの国では、誘拐事件も珍しいことじゃない。
なかなか腰を上げない警察に苛立ちながら、自ら足を運んで探し、1週間が過ぎたころ。
彼女は帰ってきた。
無事に、とはいかなかった。
その魂は、すでに死んでいたからだ。
――身も心もボロボロにされた彼女は……その二日後、自ら命を絶った。
――わしは狂った。
彼女を拉致し乱暴したのが、黄金栄とその配下の者であるとつきとめると、彼のすべてを滅ぼすために全精力を傾けた。
当時系列企業の副社長だった彼は、次々と実績を上げ、ライバルたちを蹴落として社長へ、総帥へと昇りつめた。
そこからさらにグループの業績を伸ばし、勢力を拡大させ、政府にコネをつくり、証拠を集めて包囲網を狭め――
一斉捜査の日を迎えるまでに実に10年の月日が流れたというから、どれほどの執念だったか想像に難くない。
復讐は、果たされた……はずだった。
最期の瞬間、黄がある事実を告げなければ。
『……何があった?』