ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
静かな拓巳の声がして、現実に引き戻された。
『他に好きな女ができたとか、そういうことじゃないよな?』
「当たり前だろう。僕には飛鳥だけだ」
『じゃあ、それでも結婚をためらう、その理由はなんだ?』
「……僕のそばにいることが、彼女の幸せだとは限らないかもしれない、って思ったんだ」
総帥の苦悶の表情が、目に焼き付いていた。
最期の瞬間、黄は告げたという。
自分はある人物に金で頼まれて、その通りにしただけだと。
その人物とは。
――わしの、父親だ。