ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

大の白人嫌いだった先代総帥は、息子が選んだ青い瞳の恋人を、決して受け入れなかったという。

――押し切ってしまえばなんとかなるなどと……若かったのだ、わしも。考えが浅く、甘く見ていた。


すべてを知った時にはもう、先代は病死した後だった。


――わしと出会わなければ、恋などしなければ、彼女はまだ生きていただろう。
結婚して子を産み、孫の面倒を見て、つましいながらも幸せに暮らしていたに違いない。


――結局、彼女を死に追いやったのは、わし自身だったのだ。


後悔か、絶望か。

げっそりとえぐれた頬をつたうあの涙を、僕は一生忘れられないと思う。


死にたがっているように見える、とため息をついた主治医の見立ては、おそらく間違っていない。

李龍飛(リー・ロンフェイ)――父親から贈られた本名を、ある時からぷつりと使わなくなり、自分でつけた“フレデリック”という名を公私共に使用するようになったという総帥。
白人の僕を後継者に据えるのは、先代に対するせめてもの復讐……なんて、考えすぎだろうか。

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