ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

あぁ……くそっ……

額に手をあてて、こみ上げる何かを振り払う。


「まずいな……今ちょっとキュンとしちゃったよ」

『ぶっ……無駄だぞ。オレは奈央さん一筋だから』


つられて笑いながら、さっきよりもクリアな視界を見渡した。
そこはもう、ただの部屋にすぎなかった。

鳥かごなんて、どこにも存在しない。
きっとそれは、僕が作り出した幻で……

だからもう、大丈夫だ。

「ありがとう、拓巳」

『どういたしまして』


大切な人ができて、悩むことが増えて。
恐れたり、立ち止まったりすることが増えて。

でも。

だからこそ、気づくことや見えるものが、あるのかもしれないな。



「……拓巳、君にさ、頼みたいことがあるんだけど」



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