ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「お大事に」
「ありがとうございました」
お礼を言ってお財布をしまい、さてこの後の予定は、と考えながら歩き出して――

ざわっ……

唐突に、正面入口の方でざわめきが起こった。

なんだろう?
主に女性の……黄色い悲鳴っていうか、興奮する声が……

――きゃあっかぁっこいぃ~!
――目の保養よねえ。
――こっち見たわよ、笑ったわっ!!

ナースさんや患者さん、みんな足を止めて、入口の方を見てる。
イケメンドクターでもいたっけ、この病院?

しかもざわめきはどんどん、大きくなっていく――私の方に……?

ドキリとした。
以前にも、何度か同じようなことがあったから。

もしかして……?
と高鳴る心臓を感じつつ、そちらへ顔を向ける。

人垣が左右に割れ、その先に立つ一人の男性が見えた。


「検診、お疲れさまでした」

真夏の、しかも土曜日だというのに、ダブルのスーツをビシリと着て。
汗一つかかずに涼し気に微笑んでいる彼は――


「霧島さん……」

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