ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

静けさを破って、響き渡る声。

ビクッと怯んだ私たちが入口へと目をやると……


なだれ込むように入ってきたのは優羽ちゃんを抱っこした拓巳さんと、ふっくらしたお腹の奈央さんだった。


「え、なんで? 飛鳥ちゃん泣いてるじゃない。なに、もう式始まってるとか?」
「は!? 何フライングしてんだよ、絶対行くから待ってろって言ったのに!」

カンカンに怒っているらしい拓巳さんの叫び声に、
「ライアン?」と振り仰げば。

「あー……あは、は……」

彼の顔に、悪戯が見つかった子どもみたいな、ひきつった笑みが浮かぶ。
そしてさっと私の後ろに隠れて……「まさか間に合うなんて」とかなんとか、ブツブツ……え? なんなの?


あっけにとられているうちに、またバタバタと外で足音がする。

「なんなんだ、このメールは! 『今空港、これから式挙げるから集合』、とかふざけるなっ!」
怒鳴りこんできたのは、長い足にデニムがお似合いの……え、新条部長!?

「ごめんってば、ダーリン。ライアンってこういうヤツなの」
隣のゴージャスな人は……確か、部長のパートナーよね。

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