ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
SS 5年後の吾妻家~拓巳side
「あ、そういえば今日ね、飛鳥ちゃんからエアメールが届いたの!」
会社から帰宅して部屋着に替え、ダイニングに入った時だった。
キッチンで夕食の支度をしていた奈央さんが、嬉しそうに言った。
「へぇ、飛鳥さん元気だって?」
彼女の手からコロッケの並んだ皿を受け取りながら聞く。
「うん。たっくんも自分のこといろいろできるようになってきて、随分楽になったみたい」
なぜかこの2人は手紙という超アナログな方法がお気に入りらしくて、奈央さんはしょっちゅうポストを気にしてる。
手書きだからこそ伝わることもあるでしょ、って彼女は力説するけど。
毎日のようにライアンと、メールやテレビ電話で仕事のやりとりをしているオレとしては……
まぁ、言わぬが花ってやつだ。2人がそれでいいっていうんだから。
「おねえちゃん、そこのブロックとって」
「今忙しいの」
「絵かいてるだけじゃん」
「忙しいんだってば!」
リビングで思い思いに遊ぶ優羽と航(こう)を見ながら、時間の流れの速さを思う。
もう5年になるんだな。
あいつが飛鳥さんを、シンガポールに連れて行ってから。